青空

卓越した頭脳を持ちたいと切に願っている石田です。

青い、と思った。未熟だ、と思った。

真夏日の昼練習。コンタクトメニューの最中、キャプテンが倒れこんだ。膝を抱え込んでいる。監督の話のメモを取っていた私は気づくのが遅れた。メディカル担当の同期が駆け寄る。先輩が一人で立ち上がろうとしたが、痛みで起き上がれない。「啓吾、担架!」後輩を連れて走り始めたその時だった。

キャプテンが地面にこぶしを打ち付けた。音はしなかった。でも、その感情の一撃に足を止めてしまった。ピカピカに光った銃で撃ち倒されたような衝撃だった。赤くなった先輩のこぶしが先輩の丸裸の感情をあらわしていた。

心の底では先輩のことをなめていたのかもしれない。惰性でキャプテンをやっているものだと。”全勝優勝”その高すぎる目標の達成をあきらめているのではないかと。

でも違った。当たり前だ。ラグビーという危険で痛みを伴うスポーツで30人ほどの部員を目標のもとにまとめ上げる。大変なことだ。一番目標に対して真剣に取り組んでいたのはキャプテンであったのだ。でも、それに気づけなかった。やはり私は未熟である。簡単な想像力も働かない。

気づけばキャプテンは起き上がってグラウンドの外に向かっていた。アクエリアスを持っていく。「東北大戦までには復帰する。」先輩の目は上を向いていた。

「うす。」ちょっとふざけて、でも本気でそう返事して、練習のサポートに戻る。

先輩につられて見上げた空は青かった。

次は同期で一番賢くて、イケメンで、少し変わってる神谷です。